前面道路との間に、奥行きと広がりのある緑地を配することで、大規模な建物の圧迫感をなくし、周辺環境に馴染ませている。また、本のページをめくるイメージの外観や、落ち着いた色彩と素材によって、外構の豊かな緑地と静かな佇まいの建築が呼応し、大らかで落ち着きのある都市景観が生まれている。
卯辰山麓伝統的建造物群保存地区内の伝統的建造物の修理である。空き家期間が長く老朽化が進み、また、大幅な改変により原形を留めていない状態であったが、丁寧な痕跡調査に基づく復元工事により、かつての金澤町家の外観を取り戻し、周辺の伝統的街並み景観への調和が図られている。
隣接する金沢市立玉川図書館近世史料館の赤煉瓦と呼応した色の金属壁を挿入してファサードを分割するとともに、屋根庇やバルコニーの陰影によって大きな建物の圧迫感を軽減し、周辺環境との調和を図っている。また、異なる機能の建物を一体的に設計したことによって、都市景観の連続性も生まれている。
建物が密集する街区にあって、内部機能をそのまま外観に表出させることなく、輪郭をシンプルな形態にまとめ、落ち着いた色の横ルーバーで覆った繊細なスクリーン面として見せている。この透過性のあるダブルスキンと植栽により圧迫感を軽減し、周辺環境に馴染ませている。
既設クリニックの増築棟である。水平性が強調されている既存棟に対し、コンクリート打放しの増築棟は力強い垂直性を際立たせ、全体として変化がありながらも水平性と垂直性のバランスの取れた一対の建築となっている。また、車で通過する時のランドマーク性もあり、良好な沿道景観形成に寄与している。
通りからセットバックして建物を低層に抑えることで、圧迫感のない独立した建築の魅力を発している。1~2階のコンクリート打放し、3階のガラス、上部の屋根庇が重なる水平方向の構成に対し、白いフレームによってヴォリュームを際立たせてアクセントとしながら、全体として動的なイメージを醸し出している。
並び立つ様々なビルの連続壁面の一つとして、外壁面をガラスのカーテンウォールとし、自己主張を極力抑え、シンプルかつ端正なデザインで、ガラスのファサードに樹木と空を美しく映し出している。各階の小庇で立面を分節化することで単調さをなくし、現代的な中にも繊細な日本的感性を感じさせる。
長町武家屋敷群地区において、門構えの背後に見えるショールームの外観の見せ方として、スケール感や左官壁の素材感を守りながら、現代のガラスの透明感の表現も加味している。土塀が連なる通りから垣間見えるシーンに、白い壁面とガラスの表現というこれまで当地区になかったイメージが現代の感性で付加されている。
木製方立を強調したガラス面と、内側の繊細な格子建具を重ねて見せる奥行感のある外観は、見る者のイマジネーションを刺激する。モダンでシンプルな形態ではあるが、木製縦ルーバー、左官壁、小庇などの伝統的な素材・意匠も採り入れ、歴史都市において創造と伝統が融合した姿に見える。
かつて駐車場の入口であった敷地の一部を、宿泊者を迎え入れるゲートとして設えるとともに、両隣との連続性を回復し、都心軸の賑わい創出に寄与している。また、建物をセットバックさせ、前面アーケードと呼応した屋根付きスペースを設けることで、ビル密集地の街並みにゆとりをもたせている。