外観の改修にとどまらず、通りに開かれた空間づくりと、中庭まで見通せる奥行方向の演出がなされている。主要道路と生活道路が交差する重要な地点において、角部を減築した半屋外スペースを、人々が集い、思い思いに過ごせるよう開放するなど、新たな居場所をつくり出している。
交通量の多い交差点近くで、道路に斜めに配置され、大らかな勾配屋根と水平に延びる下屋が特徴の外観。大屋根の表現と外装を濃茶色でまとめた姿から、静かな佇まいを目指す意図が感じられる。控えめなサインとあわせ、建物自身の魅力で静かにアピールする姿勢が評価できる。
大通りに面する前庭は、県立図書館と呼応した広がりがあり、建物中央部を通り抜ける屋外空間は、人々を中へ中へと誘い込む演出になっている。敷地の境界にフェンス等を設けないことで、裏の住宅地から校舎へと広大な緑地が公園のように広がっており、街に開かれた大学の好例である。
長町エリアの歴史的建造物や土塀などの景観資源を連続的にライトアップすることで、日中とは異なる夜の金沢の風情を浮かび上がらせている。地域と行政が協力し、統一感を持たせた光の演出を行うことで、連なりのある界隈の魅力を高め、夜間の人の流れが変わることが期待できる。
大らかに湾曲しながら続く河岸に、緩やかな弧を描く親水スペースが挿入され、橋の上や対岸からの見え方にアクセントを与えている。階段状になっており、腰かけてゆっくりと川の流れや風景を眺めたり、水面に触れたりできることで、川がより身近になることが期待できる。
大規模な建物ながら、大きな面を水平方向と垂直方向に分割したデザインとし、街並みに圧迫感を与えない工夫が見られるほか、外壁に凹凸をつけ、色や材質を変えることで、端正かつリズミカルな表情を創り出すなど、尾張町界隈の歴史的な場所性に配慮した意図が随所に感じられる。
寺町台伝統的建造物群保存地区の金澤町家。隣接しており、2棟同時に持ち上げて基礎からの補強・修理を必要としたが、改修時期を合わせるなど隣同士が協力して実施したことが評価される。
伝統的町家を、新たな機能と魅力をもつ施設へと再生・修景し、街並みの形成に寄与している。
全体が土壁で覆われ、車の速度で見ると土でできた環境アートのようにも見え、当地のランドマークになっている。近付くほどに土壁の素材感が迫ってくる一方、対角線に細長く設けられた露地庭的空間に視線が引き込まれる。陰と陽、あるいはドライとウェットの対比が魅力的である。
斜めに交差する大小二つの街路に対してそれぞれ建物の正面性を持たせ、二つの形状を貫通させたデザインが、軽快感のある動的な印象を与えている。二つの大きな輪郭フレームの対比も印象的であり、駅通り側の木材を用いた外観は、行き交う人の目を惹きつける魅力を備えている。
小幅な板の材質感やデザインのシンプルさによって、歴史ある寺町の街並みとの調和に配慮した佇まいである。内外の空間が一体的にデザインされ、通りかかる人が思わず目をとめる魅力がある。外周部のわずかな空地に豊富に植栽をあしらい、緑豊かな景観の形成にも寄与している。
せせらぎ通りに面して伸びやかに配置された軽快な木の表現が、街並みに対してスケール感・材質感ともに相応しい。さり気ない和の表現が付加され、街並みや建物に調和するサインと相まって、銭湯らしい風情を醸し出すとともに、大きな建物全体の存在感をやわらげている。