日本一の漆器王国

日本列島の真ん中に位置する石川県は、現在日本一の漆器王国と言われています。堅牢な塗りの輪島塗、日本一の売上高を誇る山中塗、そして加賀百万石の伝統工芸の粋と言われる蒔絵技術を有する金沢漆器、それぞれ独自の漆文化を持つ産地(経済産業省の指定伝統工芸産地)が県内にあるからです。
特に輪島塗は、漆器といったら輪島と言われるほどに、良質の漆器の代名詞になっています。その歴史は室町時代(約600年前)に紀州根来寺から伝えられた技術を取り入れて漆器が作られるようになって以来、寛文年間(1661〜73年)に地の粉が発見され、漆と糊と地の粉を合わせて作る下地の製法により、日本一堅牢な漆器としての名声を得るようになりました。
山中塗は、天正年間(約450年前)、良材を求め隣国越前より移住してきた挽者師が、山中温泉の土産物として轆轤(ろくろ)挽きの品物を作るようになったことに始まります。
金沢漆器は、寛永年間(1630年頃)美術工芸の振興に力を注いだ加賀藩三代藩主前田利常が、京都から五十嵐道甫を招いたことに始まります。東山・桃山文化を代表する蒔絵の名工であった道甫は、細工所の指導者として王朝文化を持ち込み、以来歴代藩主に仕え、多くの門人・師弟を育てました。このように、蒔絵を中心として貴族文化の優美さに力強い武家文化が加わった独自の漆工芸として発展してきました。この技術は細工所や町方の門人、師弟に伝授され、江戸、明治、大正、昭和を経て今日まで継承されています。
能作は、創業安永9年(1780年)、漆の仕事を代々家業として約220年余り、現在は七代目主人が、漆・漆器の老舗として、こだわりの商いを続けております。
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